My Brown

2016年8月15日 Nishiwaki Jinya

よくよく考えてみれば、僕の好きなものは「茶色」ばかりだ。土の上を走る自転車、マウンテンバイク。振り向けばベッドでくつろぐ、愛犬のチョコレートラブラドール。そして今回の主役、コーヒーである。

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マウンテンバイクが好きで、大学卒業後に渡ったカナダ。そこで出会った仲間たちは、コーヒーを飲んで1日をスタートさせていた。中には焙煎業を営む友達も いた。それまでは、正直なところ、たいしてコーヒーが好きではなかった。飲むのはインスタントばかり。そんな僕が、向こうに住み始めてから、油の浮かぶ濃 いコーヒーを飲むようになった。そして、それが美味しいと感じられるようにもなった。フィルターも、淹れ方も、気にしない。とにかく、一番深煎りの豆を 買ってきて、フレンチプレスで飲むだけ。するとどうだろう、ポジティブな気持ちになれる。カフェインのおかげで元気になれる。その勢いのまま、山へマウン テンバイクを乗りに出かける日々が続いた。そしてコーヒーは、ただの滞在中の儀式に留まらず、どうやら僕のライフスタイルに組み込まれたようだ。言葉や写 真を生み出す仕事柄、クリアな頭で挑みたい僕に、コーヒーは欠かせない。仕事を始める前は必ず一杯、いや二杯は飲んでいる。でも、それはいつもの自分の部 屋兼オフィスでのこと。この日は梅雨の晴れ間、しかも暑くないときた。ちょうど煮詰まっていたこともあり、外に出てみようと思った。そして、コーヒーを外 で飲んでみようとも。自然派カフェに行くのではない。自然そのものの中で、コーヒーを飲みに行くのだ。座席はどこに座ってもよい。メニューから選ばずと も、自分のお気に入りを、好きなタイミングで作ることができる。そんな自由なコーヒーの飲み方が、自然の中ではできる。

そもそも気晴らしなんだから、気を張る必要はない。荷物も簡単にまとめよう。バーナーで火を沸かすのもよいが、それではポットも必要になる。それなら、予 め沸かしたお湯を魔法瓶に入れ、持って行けばよい。普段はフレンチプレス派だが、待ちたくない、ゴミの処理を簡単にしたい、という理由から、エアロプレス を持ち込んだ。これは手軽にエスプレッソを作れるシリンダーである。途中のコンビニでおやつを買い、マウンテンバイクで走ること15分。河原に到着だ。あ りがたいことに、先客はいない。肩幅ほどの一本橋を、慎重に渡る。辺りを見回し、自分だけのエスプレッソバーが開ける場所を探す。よし、あの大きな岩の上 にしよう。予め家で挽いてきたコーヒー豆を、容器に投入する。そこに熱々のお湯を注ぎ、1分待ってシリンダーを押し下げれば、熱々のエスプレッソの出来上 がり。もっと気温が高い日なら、川にカップを浸けて冷まし、アイスコーヒーにするのもよいかもしれない。ちなみにこの日の豆は、数ヶ月前、マウンテンバイ クを乗りに訪れたニュージーランド・ロトルアで買ったもの。もちろん、一番深煎りのものをゲットした。突き出た岩の先端に座り直し、コーヒーを飲む。そし て川のせせらぎや鳥が奏でる音に、耳を傾ける。これは特別な時間だ。飲んでいる間、自分に流れる時間が止まる。動くのは、自分以外のすべて。ハヤが、水中 を自由に泳ぎ回る。指の爪ほどの大きさのカジカガエルの赤ちゃんが、足元を飛び跳ねる。サギが、ピクリとも動かず、水中の獲物とにらめっこしている。周り は、動いている。僕は、コーヒー片手に止まっている。そんな非日常的な光景に目を向けられるのも、コーヒーがあるからに他ならない。この贅沢な時間も、 コーヒーがなくなり次第、終了だ。しかし、それで終わりにしてはもったいない。コーヒーで高めた気持ちを保ち、残りの1日をクリエイティブに過ごしたいも のだ。そしてこれを翌日も、そのまた翌日も繰り返す。自分のライフサイクルに取り込む。自分の燃料にするのだ。

コーヒーとの時間を存分に愉しんだら、周りを見てみよう。綺麗な自然でも、探せばゴミが落ちていることもある。持ち込んだものは、持ち帰る。これは自然に 身を置くときの基本だ。でも、もしゴミが落ちていたら、進んで拾おうじゃないか。わざわざ川にまで来てコーヒーを飲むくらいだ。それくらいの余裕を心に持 ちたい。そして、次に訪れる人のことも考えられる、大人なコーヒー飲みになろう。

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アウトドアコーヒーレクチャー&翻訳

西脇仁哉

Nishiwaki Jinya

プロマウンテンバイカー&翻訳家。海外マウンテンバイク雑誌などの翻訳をしながら本人もプロのマウンテンバイカー。昔からコーヒー好きで、アウトドアコーヒーに関する資材も多数所有。空気の澄んだところで飲むコーヒーは美味であり広めたい文化。



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