キーワードは一手間

2019年2月15日 Nishiwaki Jinya

コーヒーと一緒に出かけ、一手間かけて飲んでみよう。「あそこでコーヒーを飲んだら美味しいだろうな」。そう思える場所があれば、そこがあなたの目的地。僕の場合、それは1000km先の北海道の湖畔であり、花火を見るべく登った長野の山の頂上でもあり、歩いて20分の近所の河原でもあった。

 

行き先を計画し、実際にそこまで行き、景色や静けさにありがたみを感じながら、一杯を味わう。ただ飲んだという事実だけでなく、一つのストーリーまで生まれることもある。そんなプロセス全体を楽しむのにピッタリの食べ物や飲み物は、コーヒーの他にないと思う。

 

 

外でコーヒーを飲むと言えば、何かと準備が大変のように聞こえるかもしれない。だが、実際に必要な道具はそれほど多くない。お湯を登山用ガスバーナーで沸かすか水筒で持って行き、予め挽いておくか現地で挽いた豆を様々な抽出器具で淹れるだけ。キャンプ用の小洒落た道具を揃えても良いし、いつも家庭で使っている道具をそのまま持って行っても良い。また、イスやブランケット、さらにはハンモックもあると、自分だけの空間作りに役立つはず。たったこれだけで、即席カフェの出来上がり。外にいる時間がグッと楽しくなる。では参考までに、先に触れた僕のコーヒーのストーリーを紹介しよう。

 

 

8日間を車で2400km走ったロードトリップ。目的地は北海道。長野県の白馬村をスタートし、日本海側を北上して、フェリーで北海道へと渡った。相棒のサニーを連れて行ったので、寝泊りは車中泊かキャンプだった。不自由さをあえて選んだ次第である。ステーションワゴンに満載の荷物の中には、当然、お気に入りのコーヒーセットも忍ばせておいた。

北海道でキャンプをするなら、どうしても訪れたい場所があった。それが支笏湖の畔にある、景色が評判のとあるキャンプ場。湖の向こうでは、風不死岳(ふっぷしだけ)が美しい曲線を描いていた。スマホアプリで日の出の方角を調べると、なんとその風不死岳の後ろから朝日が昇るではないか。タイマーを午前4:30にセットし、エゾシカの鳴き声を聞きながら、早々と眠りについた。

 

 

翌朝。頭上の空の色は紺色だが、風不死岳の後ろは金色だ。そのうち、そこから太陽が顔を出す。急いでお湯を沸かし、コーヒーをプレスで淹れた。そして、ご来光。カップから立ち昇る湯気が、朝日に照らされてキラキラと光る。見事な日の出を眺めながらの一杯は、格別だった。余談だが、下の写真をよく見ると、僕の手にはサニーのリードが握られている。この写真を撮った直後、サニーが近くにいたカラスをいきなり追いかけたせいで、ジャケットの袖がコーヒーまみれとなってしまった。こうして、一つのストーリーが付け加えられた。

 

 

僕は夏の間を、長野県の白馬村で過ごす。自身のMTB遊びを追求するためでもあり、サニーを暑さから遠ざけるためでもある。そんなある日、隣町の花火大会をハウスメイトたちと見に行くことになった。でも、ただ真下から見上げるのではツマラナイ。そこで、パラグライダーの離陸用に頂上の一部を切り開いた山から、花火を見下ろすことにした。きっと、絶景が目の前に広がるはず。誰もがそう思った。

 

 

山頂に到着。眼下には、街明かりが広がっている。花火の打ち上げまでしばらく時間があったので、コーヒーを淹れて皆に振舞った。するとどうだろう。飲み干すかどうかのタイミングで、湿った空気が山の斜面を這うように吹き上がり、みるみるうちに辺りは霧に包まれた。花火を撮影するために置いた三脚の姿は、もう見えない。一手間かけて特等席を見つけるも、こうなってしまってはお手上げだ。それでもコーヒーを飲み、雨に濡れた体を温めながら、仲間と談笑できた。「コーヒー飲めたから、良かったことにしよう」。また一つのストーリーが生まれた。

最後は夏前のストーリー。暑い中でお湯を沸かすのはちょっと、と敬遠する人もいるのでは? そんな時は、涼しい部屋でアイスコーヒーを作り、水筒に入れて持って行くに限る。氷をたっぷり入れた水筒からは、歩くたびに氷が涼しげな音を奏でている。澄んだ淵の前にブランケットを敷いたら、清涼感溢れるスポットの出来上がりだ。モデルになってくれた友達曰く、これまでコーヒーを外で飲むと言えば、カフェのテラスが関の山だったそうだが、こうして自然の中で味わうコーヒーのおいしさに目覚めたようだ。きっと、彼女もこれから、コーヒーとのストーリーを作り出していくに違いない。

 

冬本番。外で飲むコーヒーの素晴らしさを身に染みて感じられる季節が、しばらく続く。ぜひ、あなたがココだと思えるスポットで、至高の一杯を淹れてみて欲しい。一手間かけた先に、ハイクオリティーな時間があなたを待っている。

 


アウトドアコーヒーレクチャー&翻訳

西脇仁哉

Nishiwaki Jinya

プロマウンテンバイカー&翻訳家。海外マウンテンバイク雑誌などの翻訳をしながら本人もプロのマウンテンバイカー。昔からコーヒー好きで、アウトドアコーヒーに関する資材も多数所有。空気の澄んだところで飲むコーヒーは美味であり広めたい文化。



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